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「せんの手間」 2021|段ボール、新聞紙、針金、木材、収穫袋、ペンキ、石膏、方解末、写真、ターポリン、他
長崎県の対馬に「せんだんご」という食べ物がある。「せんだんご」とは、さつま芋を切って干し、水に晒し醗酵させ、団子状にしたものを再び水に晒し、乾燥させた食品だ。対馬は平地が少なく、稲作が行える場所が少なかったことから、痩せた土地でも生育可能なさつまいもを作り、それを長期保存するために考えられたのが「せんだんご」だという。そして、「せんだんご」を粉にして作る麺を「ろくべえ」という。対馬に滞在する前から、私はこの複雑な工程によって出来る食品のことが気になっていた。 偶然にも峰町の歴史民俗資料館で、せんだんごを作る多田さんとお会い出来、せんだんごの作り方について教えてもらった。そして、せんだんごを素材として出来る料理「ろくべえ」をお宅で頂くことになった。丸めた生地を持って外の鍋 へ移動すると、既に鍋の湯が煮立っていた。お母さんはろくべえ作り専用の道具に生地を押しつけスルスルと湯に麺を落とす。出来た麺はくるんとした独特の形をしていた。自分の命をつなぐために素材と向き合い、半年におよぶ複雑な工程を生み出した対馬の人達。そこにある大きな営みのようなものを、かたちにしたいと考えた。
教室内、屋外ターポリン写真撮影:多田福吉
協力:峰町多田さんご一家、阿比留さん親子、鍵本妙子、横田良、西松秀祐、黒田大スケ(敬称略)
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